――渡辺翔さんを中心に結成されたsajou no hanaですが、sanaさんはヴォーカリストとして声がかかった時はどんな印象を持ちましたか?
sana ビックリしました。元々バンドを組むという発想が私にはなかったし、ずっと1人のソロシンガーとしてやっていくものだと勝手に思っていたので。基本的には私、怖がりなんですよ(笑)。新しいことを受け入れることも、慎重になってしまうというか。
――最初は受け入れるまで時間がかかった?
sana だって、翔さんってすごい方じゃないですか。
渡辺翔 そんなことないから(苦笑)。
sana だからシンガーとして「私で大丈夫かな?」って、正直に言うと思ってしまって。プレッシャーはやっぱり感じました。最終的には「私に何ができるか」を考えながらも、「やってみよう。飛び込んでみよう」って思ったんです。バンドのような仲間を持つことははじめてですが、心強いメンバーで本当に良かったなって思いましたね。
――キタニさんは?
キタニタツヤ 声をかけてもらう前から、翔さんがこれまでやられてきた仕事のことはもちろん知っていたし、「売れっ子の人」ってイメージを当たり前のように持っていて。そんな翔さんから誘ってもらえたのは、素直に嬉しかったです。ただ、僕は事務所(スマイルカンパニー)に入ってまだ日も浅かったから、声がかかったことにまずビックリしてしまって。とはいえ、二つ返事でOKはしたんですけどね(笑)。まず面白いことができそうだし、僕はJ-POPに対してカウンターみたいな音楽を示したいと考えていて、それを音楽作家としてではなくバンドとしてやれるのは、チャンスだと思ったんです。僕の野望を叶えるという意味でも、バンドに誘ってもらえたのは嬉しかったですね。
――渡辺さんは2人のメンバーをどのように捉えていますか?
渡辺 sanaちゃんは、初めてみたのが2014年のオーディンションで、そのときよりも今はかなり成長しているなという印象があって。まだすごく若いので、これからの伸びしろも間違いなくある。今までは100%の力を歌に込めるようなパワフルなスタイルでしたけど、表現力という意味ではより振り幅がつけられれば最強のヴォーカリストになると思っていて。たとえば、静寂とか空虚さとか悲しみとか。そういう歌に関しては、今まさにsajou no hanaで突き詰めているところかもしれません。そしてキタニ君は、まず髪が長い。
キタニ 何ですかそれ(笑)。
sana 私の第一印象も「髪長っ!」だったから(笑)。
渡辺 かっこいいよね。坊主だったらバンドに入れるかどうか考えたと思う(一同笑)。本当の意味でハイブリッドだと思うんですよ。作詞をさせても言葉選びのセンスがあるし、メロディもアレンジもハイセンスだし、ベーシストとしても活動していて。こんなに頼れる仲間は他にいないだろうと思いますから。sajou no hanaはバンドなので、僕が曲を書いて彼がアレンジをしたり、彼が曲を書いて僕が作詞をすることもあるし、完全に彼が1曲を仕上げることもある。でもそこから生まれるさまざまな化学反応がとにかく楽しみでした。
――バンド内における3人の関係性は平等ということでしたよね。
渡辺 3人で食事をしていた時「バンドである以上、お互い気を遣いあうのはやめよう」と僕が言ったら、さっそく「ごはん粒ついてますよ」って言われて(一同笑)。そんな感じで仲良くやっています(笑)。
――sajou no hanaはキタニさんのアイデアからつけられたバンド名とのことでしたが、どのようなイメージで?
キタニ sanaさんのイメージに引っ張られたところが大きいですね。立ち姿とか、歌い方とか、そういったイメージから与える印象はロックバンドみたいに英語で「〇〇〇ズ」みたいなバンド名ではないだろうなって。そこで日本語をアルファベット表記にするというアイデアの元、いくつか案を出した中にあったこのsajou no hanaが一番メンバー間でシックリきたんです。
sana 荒涼とした何もない場所で咲いている一輪の花のイメージが、とても美しいなと思いました。あと言葉としての響きも綺麗だなって。
キタニ アルファベットにしたのは、意味を規定し過ぎない方が音楽を聴いてもらうときに余計なバイアスがかからないと思ったからで。はっきりと意味を伝えたいわけではなくて、一つのイメージに捉われるよりもいろいろなイメージを持ってもらった方がいいと思ったから。
渡辺 やっぱり曲を中心に楽しんでもらいたいからね。音楽から受け取ったイメージや印象を大切にしたいから。
――sajou no hanaの楽曲からは、音楽ジャンルに捉われない柔軟なサウンドデザインを強く感じます。
キタニ やりすぎも良くないとは思うんですけど、そのバランスは翔さんが計算をしてくれるので。僕の手元にデモが届いた段階で、「アレンジはこうしてほしい」というのは結構明確なんです。その中で最大限に僕の色を入れることが、任された役割でもあるのかなって。プラモデルの元を渡してもらって、僕は「この造形に対して何色塗ろうかなー」みたいな感じですね。そしてそのプラモデルの元はちゃんと“ポップス”になっているから。
――なるほど、分かりやすいですね。
渡辺 ポップスの範疇であるからこそ、色の塗り方としてただ綺麗なだけではなく“汚し”を入れても大丈夫、という感じですね。だからノイズやサウンドエフェクトも散りばめてあって、それを見たときにオリジナルなカラーリングに仕上がればsajou no hanaなのかなと。
――最後に、sajou no hanaとしてメンバーのみなさんはどんな未来を思い描いていますか?
キタニ やるからには、日本のポップスシーンを席巻したいと思っています。やるからにはたくさん売れたいし、やるからには若い世代から厚い支持を獲得したい。そして大勢の若者たちが、何かを考えるきっかけになるような音楽を作り続けたいと思っています。
sana sajou no hanaを好きになってくださったみなさんと、まるで会話をするように音楽活動ができればと思っています。たとえばそれはライブかもしれませんが、その会話によって私も考えながら歌を届けていきたいです。
渡辺 僕はバンドって生き物のようなものだと思っているので、たとえば時代だったり流行だったり、僕たち自身の趣味嗜好だったり、そういうものによって変化していっても良いと思っていて。だから未来のsajou no hanaについては2年後、3年後の自分に任せて(笑)、まずは自分たちがやりたいと思えることに対してピュアでありたいです。この3人でしか生まれない音楽を、信じるままに作っていきたいですね。